「借金ゼロ、そして再スタート」――再生を果たした社長の胸の内

中小製造業を営むA社は、数年前まで資金繰りの悪化に苦しみ、廃業寸前に追い込まれていた。そのA社が、事業再生のスキームを活用し、負債をすべて整理しながら事業を継続。いまや黒字経営を取り戻し、次の成長段階へと踏み出している。その立役者である社長に、再生を終えた今の心境を聞いた。

――再生を終えた今、率直なお気持ちは?

とにかく『肩の荷が下りた』という言葉がぴったりです。夜、ぐっすり眠れるようになりました。何年もずっと頭の中が借金のことばかりで、夢の中でも取り立ての電話が鳴っていたほどです。それが今は、朝起きて深呼吸できる。ああ、生きててよかったなって思えるようになりました。

――再生の道を歩む決断は、簡単ではなかったのでは?

正直、怖かったです。再生という言葉は知っていても、自分の会社が対象になるとは思っていなかったし、失敗した経営者だと見られるんじゃないかという不安がありました。でも、事業再生コンサルタントの方が『このまま行けば選択肢はなくなる』とハッキリ言ってくれて、それが背中を押しました。

――再生後、何が一番変わりましたか?

まず、現金の心配をしなくてよくなったこと。これが経営において、どれほど大きいかを痛感しました。負債がなくなり、毎月の返済に追われない分、設備投資や新しい取引先開拓など、前向きな経営に力を注げます。あとは、自分自身の気持ちも変わりましたね。以前は守り一辺倒だったのが、今は攻めることができる。

――これからの目標は?

この経験を無駄にしないことです。社員を守り、お客様に喜んでもらい、地域に貢献できる会社をつくる。そして、同じように苦しんでいる経営者の励みになれたらいいなと思います。

A社長の笑顔は、かつての疲弊した表情とはまるで別人のようだった。事業再生は、単に借金をなくすだけではない。経営者に新しい生き方を与える――そのことを、A社の歩みが証明している。