ケーキや和菓子は「高値の花」?
スイーツ業界の苦境を脱却した事例に学ぶ再生のヒント

スイーツ業界の再生事例イメージ

東京商工リサーチの調べによると、2025年1~9月の菓子製造小売業の倒産件数は37件。この数字は過去20年で最多となり、街のスイーツ店が次々と姿を消しています。

背景には、コンビニなどの安価なスイーツに顧客を奪われていることに加え、原材料や光熱費の高騰、人手不足といった要因があります。それらのコスト上昇を価格に転嫁しづらい現実が、経営を圧迫しています。

「値上げをすれば売れない」「据え置けば赤字が増える」──そんな板挟みの経営が続くなかで、お客様にとって菓子専門店のスイーツは“高値の花”になりつつあります。

しかし、これはスイーツ業界だけの話ではありません。多くの中小企業が同じように、価格競争に限界を感じているのです。今こそ問われているのは、「価格」ではなく「構造」をどう変えるか。事業の中身を見直し、再構築する力が求められています。

値下げではなく「再構築」で勝つ発想を

経営を立て直すには、単にコストを削るのではなく、収益の仕組みそのものを見直すことが重要です。原価や販売チャネル、ブランドの打ち出し方まで、構造から変える覚悟が求められます。

たとえば、2001年に経営破綻した洋菓子のヒロタは、スポンサー支援を受けて事業を再建。赤字店舗を整理し、「本業回帰」を掲げて再出発しました。守るべきは“味とブランド”という原点。本当に残すべきものを選び取った結果、全国展開を果たすまでに回復しました。

また、埼玉県の老舗和菓子店五穀祭菓をかのも、10年続いた赤字から脱却した例として注目されています。不採算商品の撤退と主力商品の再設計、さらにヒット商品「葛きゃんでぃ」を生み出し、地域のストーリー性を生かしてブランドを再構築。「値段」ではなく「価値」で選ばれるお菓子屋へと生まれ変わりました。

さらに、広島の和洋菓子工房 泉屋は、後継者不在の中で第三者承継を実施。「味・店・想い」を残す形で運営を引き継ぎ、地域に根ざした伝統を次世代へつないでいます。

守るために「変える」勇気を

これらの事例に共通しているのは、何を残し、何を手放すかを明確にしたことです。構造を変える勇気こそが、再生への第一歩。

そして、もし経営が厳しい状況にあるなら、「第二会社方式」のように、新会社へ事業を移して再スタートする手法も存在します。負債を抱えたまま無理に立て直すのではなく、事業の本質を守りながら再出発する現実的な選択肢です。

価格競争から抜け出すための道は、目先の工夫で乗り切ることではなく、構造を変えて未来をつくること。経営の形を変えながら、本当に守るべき価値を残していく。スイーツ業界の事例は、その勇気を私たちに教えてくれます。

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