最近よく耳にする「早期事業再生法」とは?

最近よく耳にする「早期事業再生法」とは?

こんにちは、弁護士・中小企業診断士の大竹夏夫です。

最近よく耳にする「早期事業再生法」について、中小企業経営者の方向けに、ポイントを絞って整理します。

そもそも早期事業再生法ってご存知でしょうか?

実は昨年に設立したばかりの新しい法律なので、知らない人がほとんどです。
そういう自分も昨年末に知って、勉強しました。

まず最初に押さえていただきたいのは、早期事業再生法は「借金が自動的に消える魔法」ではない、ということです。

これは、倒産に至る一歩手前の段階で、事業の価値をなるべく傷つけずに立て直すための、新しい“再建の器”です。

従来は、私的整理(銀行との任意交渉・事業再生ADR等)か、法的整理(民事再生・会社更生等)か、実務上は大きく二択になりがちでした。

そこに「第三の選択肢」を加えるのが、この法律の狙いです。

背景には、コロナ後の借入増、物価高や人手不足、金利上昇などで、資金繰りがじわじわ苦しくなる企業が増えたことがあります。

従来の再生手段にはそれぞれ弱点がありました。

法的整理は、裁判所の手続として公平で強制力もありますが、官報公告等による信用不安が避けられず、取引停止や受注減などで事業価値が毀損しやすい。いわゆるレピュテーションリスクです。

一方、私的整理は非公開で進められ、金融債務に絞って調整できる利点がある反面、「全員同意」が原則で、たった一行の反対で不成立になり得る。ここが長年のボトルネックでした。

早期事業再生法は、このボトルネックを「多数決」と「裁判所の認可」で乗り越えようとします。

制度のキーワードは、早期・円滑・柔軟です。

早期とは、資金ショート寸前の会社だけでなく、「このままだと窮境に陥るおそれがある」段階から、再建のテーブルに乗せられるという意味です。

円滑とは、非公開の枠組みを保ちながら、第三者の関与で公正さを担保し、手続を止めにくくすること。

柔軟とは、全員同意ではなく一定の賛成多数で成立させることで、再建の選択肢を現実に使える形にすることです。

仕組みを大づかみに言えば、「第三者機関+多数決+裁判所」です。

対象となる債務は、原則として銀行等の金融債務に限定されます。
売掛金などの取引債権、未払賃金、税金はこの制度では整理できません。

ここは重要なので繰り返します。
「借入金は整理できる可能性があるが、税金や仕入代金の未払いが重い会社は、それだけでは再建できない」ということです。

手続の流れは、指定確認調査機関(第三者機関)に申し込み、要件を満たすかの確認を受け、必要に応じて担保権実行や強制執行の中止命令を裁判所に求めつつ、再生計画と債権の権利変更案を作ります。 そのうえで対象債権者集会で決議を行い、債権額ベースで原則4分の3以上の同意(加えて頭数要件)を得られれば、裁判所の認可を経て、反対した一部の金融機関も拘束されます。

私的整理の非公開性と、法的整理の強制力を“いいとこ取り”したハイブリッド型だと理解すると分かりやすいでしょう。

では、事業再生ADRと何が違うのか?

最大の違いは、全員同意か、多数決かです。

ADRは金融機関のうち一行でも反対すれば止まりますが、早期事業再生法は一定の賛成多数で前に進められる。また、利用できる段階がより早い設計になっています。

他方で、裁判所が関与する分、書類や手続は簡便とは言いにくく、専門家チーム(弁護士・会計士等)の関与は実質的に必須になるでしょう。

注意点もあります。

第一に、制度があっても「使える会社」と「使いにくい会社」があります。税金滞納取引先未払いが深刻なら別の手当が不可欠です。

第二に、「制度が施行されるまで待つ」という発想は危険です。再生の最大の敵は時間で、遅れるほど資金が減り、選択肢が消えます。施行直後は運用がこなれておらず、想定どおりスムーズに動かない可能性もあります。

第三に、多数決で押し切れるからといって、反対した金融機関を軽視してよいわけではありません。再建後の資金調達や地域金融機関との関係を考えると、丁寧な説明と合意形成の努力は、むしろ重要性が増します。

ここで第二会社方式にも触れておきます。

早期事業再生法は金融債務中心の整理ですが、第二会社方式は、事業を新会社に承継し、旧会社側で債務整理を進めることで、取引債務や個人保証の問題も含めて設計しやすい場面があります。

スポンサー交代が必要な案件、取引先債務の整理が避けられない案件などでは、今後も第二会社方式が有力な選択肢であり続けます。

新しい制度ができたからといって、従来の手法が不要になるわけではなく、むしろ「どの手段を、どう組み合わせるか」の判断が重要になります。

なお、早期事業再生法は2025年6月に成立・公布されましたが、現時点(2026年1月)ではまだ施行前で、施行は公布から1年6か月以内、つまり遅くとも2026年12月中旬までに開始される予定です。 細かな運用は今後の政省令・規則・実務指針で固まっていくため、最新情報の確認も欠かせません。

最後に、経営者の方へ一番お伝えしたいことがあります。

早期事業再生法は“早期”と名が付くとおり、早く動くほど効果が出やすい制度設計です。

早めの相談こそが再建の成否を分けます。

「返せなくなってから」ではなく、「返済が重くなってきた」「資金繰り表が怖い」「追加融資が出にくくなった」と感じた時点で、財務と事業の両面から手当てを始めるべきです。

ご自身だけで抱え込まず、弁護士や公的支援機関、再生の専門家に早めに相談してください。

早く動けば、打てる手が増えます。

早期事業再生法も、第二会社方式も、その他の私的整理も、最適解はケースごとに異なります。

だからこそ、早期の見立てと選択が重要なのです。

弁護士・中小企業診断士
大竹夏夫

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