トランプ関税が日本経済に与える波紋―経営者に求められるリスク管理

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2025年4月、米国トランプ大統領は「相互関税」を発表しました。
日本との交渉では一定の合意がありましたが、大統領令の記載ミスにより25%の関税が継続。現時点(8月20日)でも修正はなされていません。

帝国データバンク(TDB)のマクロ経済予測モデルによると、関税の継続は日本経済に以下の影響を与えると試算されています。

・実質GDP成長率:▲0.4ポイント(数兆円規模の経済活動が失われる水準)
・輸出:▲1.3ポイント(特に自動車関連。対米輸出21兆円のうち7兆円超を占める分野が直撃)
・企業経常利益:▲1.7ポイント(5年ぶりに減少へ)
・倒産件数:約260件増加(全国で毎日1社近く余計に倒産する計算)

米国の実効関税率は1933年以来となる18%台に跳ね上がり、日本企業にとって外部環境のリスクは戦後例を見ない水準に達しています。

では、このような環境下で経営者が取るべき行動は何でしょうか。

経営者のためのリスク管理チェックリスト

  1. 取引先集中リスクの点検
     売上の半分以上を占める主要取引先が存在しないか確認。特に輸出産業や自動車関連に依存している場合、収益シナリオを複数用意する。
  2. 資金繰り余力の確認
     現金残高で何か月持つかを試算。金融機関との与信枠は、業績が悪化する前に確保しておくことが重要。
  3. 業界全体の動向モニタリング
     同業他社や業界団体のデータを定期的に確認。顧客先が受ける影響を把握し、自社への波及ルートを想定する。
  4. シナリオ別の経営計画策定
     「関税が下がるケース」と「現状が続くケース」の双方で収支計画を策定し、最低限の対応策(人員調整、投資判断、販路開拓)を明確化する。

業界別の留意点

  • 製造業(自動車・部品・金属)
     調達コスト上昇が避けられない。価格転嫁の交渉や国内販売比率の引き上げを検討。
  • 物流・運輸業
     荷動き減少に備え、異業種顧客の開拓を推進。車両維持費や燃料費のコストダウンも早めに着手。
  • 小売・サービス業
     地域経済の冷え込みが消費に波及。リピート需要の強化やサブスク型サービス導入など、顧客基盤の安定化が鍵となる。

関税問題は企業がコントロールできるものではありません。
しかし、リスクを事前に織り込み「シナリオを描いておく」ことは経営者の責任です。
今回のトランプ関税は、各社にとって自社の耐久力を点検する絶好のタイミングとも言えるでしょう。